3,4月は天候も安定し、綺麗なオーロラが夜空を舞うことが多かった。
オーロラの活動の強い日は、天気予報とにらめっこの時間が自然と長くなる。
山に囲まれた地域で、天候が変わりやすく、晴れの予報が出ていても安心できないからだ。
ほんの一時間で、天気予報が変わってくるため、油断ができない。
衛星写真の雲の動きも合わせながら、じっくりと天気を予測していくのだ。
それでも、勘がほとんどの割合を占めるこの予測は、外れることもしばしば。
翌朝に目覚めてから、「実はオーロラが空をおどっていました。」などと聞いた日には、寝込んでしまうほど悔しいので、なるべく出かけてみるようにする。
気温も-15℃程度で落ち着いてきた頃、新月の日に快晴に恵まれた。
オーロラがまだ現れていない夜空は、星達で埋め尽くされる。
天の川をはじめとして、真上に位置する北斗七星や北極星から、ユーコンの緯度の高さを伺えた。「降るような満天の星空」とはまさにこの空だろう。
まばゆくきらめく星たちから、何か音が聞こえてきそうだ。
そして、美しい星空の中、北の空が少しずつ明るくなり始めた。
オーロラが徐々に強まり、一筋の線が空を横切り始めると夜空が一変する。
天の川や小さな星たちが姿を消し始め、美しいオーロラが空を舞い始めた。
激しく舞い続ける時間は一瞬だが、その間の変化は本当に素晴らしい。
森の木々のシルエットを浮かび上がらせ、無数の形へと変化するのだ。
時間にして3分にも満たない時間だろう。それでも、踊っている瞬間は、時間という概念から解放され、無意識に見入ってしまう。
ただただ、美しい。
そして、空が静寂に包まれた頃、そのオーロラの美しさに気がつくのだ。
その余韻の強さが、どれほどオーロラが美しかったかを雄弁に語る。
まさに、オーケストラのコンサート後のような感覚だ。
その鳴り止まない余韻に浸りながら家路も、また幸せな時間である。