11月にもかかわらず、気温が-30℃近くまで冷え込む日が増えてきて、ユーコンにも厳しい冬が到来したようだ。
白く染まる森は、ただそれだけで美しい。
トウヒの木の枝にふんわりと積もった雪が、時折、重さに耐えかねて地面に落ちると、静寂に包まれている森に一瞬だけ音が戻る。落ちた雪は、地面に積もった雪とぶつかってふわりと舞い上がり、日光を反射させながらキラキラと光る。
2重の手袋をしていても、指先が痛くなるような寒さだが、それでも、森の美しさを感じる瞬間は、寒さを忘れて見入ってしまうほどだ。
9月、10月の忙しい繁殖期を終えた多くの動物は、また静かに冬を迎えるために準備を始める。クマは、快適な冬眠生活を送れるように沢山の脂肪を蓄え、バイソンやシカたちは、黙々と採餌に集中する。冬は、多くの植物が雪の下へと埋まってしまうために餌の乏しくなり、夏には口にしない針葉樹の葉やコケなどを食し、一日のほとんどの時間を採餌活動に当てて過ごす。
それ以外の時間は、消費するエネルギーを抑えるために、じっとしていることが多い。
動物ウォッチングからすると動きがなく退屈な絵になってしまうが、厳しい冬を生き抜いて命を繋いでいく姿には、生きる力強さを感じる。
どんなに寒さが辛い日でも正面から受け止め、数ヶ月先の雪解け時期を待ち続ける姿には、襟を正される思いであった。