先月は、夜間も天候が安定して、毎週のように綺麗なオーロラを見ることができた。
星が輝く夜空を、一本のオーロラが走り、次第に形や色を変え、時には生き物の様に動いて見せてくれる。オーロラを「神秘的な光」と表現する紹介文をよく目にするが、この表現にはすごく納得がいく。
流れ星の様に、何か願いを聞き届けてもらえるのではないかと、錯覚してしまうくらいだ。
自分の乏しいボキャブラリーでは、この感動を表現することは難しく、ただ感嘆文を連発するのみである。いつもは、動物の魅力をどの様に一枚の写真に表現して伝えるのかと考えて撮っているのだが、この時ばかりは、そんな具体的な気持ちの表現はしまい込んでしまう。一枚の写真に何か工夫を加えようとする創作意欲は消えてしまい、後はこの綺麗な光景を見ることに集中してしまう。
きっと初めてオーロラを見た人は、大人も子供も関係なく、まずは「おー!」と歓声をあげるのではないだろうか。
特に冷え込んでいた先月は、ホットチョコレートが体によく染みた。至福の時だ。スノーシューの時もそうだが、外で飲むホットチョコレートより美味しいものはなかなか見つからない。甘さが、疲れた体に広がり、元気が戻ってくる。
しかし、自分には、外で飲むホットチョコレートより至福な時がある。
それは、オーロラが夜空に舞い始めた時に、凍った湖の中心で寝転がって見るときだ。
冬には厚さ1mにもなる平らな氷の上を歩いて行き、寝っ転がってみる。目の前には、360°に広がる満天の星空の中をオーロラが降るように踊り、下からは、時折、氷同士が擦れ合う音が聴こえる。地球の生命活動を体で感じることができる瞬間だ。
広い湖に自分しかおらず、すべてを独り占めできる贅沢な時間である。
幻想的な視界が広がり続け、時間や寒さを忘れていつまでも見続けてしまう。
こんな時間こそ、最高に幸せな時間ではないだろうか。