モモンガやフクロウなどの定点の巣を持つ動物以外の写真を撮ろうと思ったら、山歩きは必須になってくる。
もちろん、キツネなどの同じ道を歩きやすい動物は、そのルート付近に待っていれば出会うことができるが、それでは毎回同じような写真になってしまう。
だからこそ「新たな瞬間を求めて山を歩いて動物を探すんです。」と気取って話しているが、単に山歩きが楽しくてたまらない。
それは、同じ森を歩いていても、毎回異なった姿を見せてくれるからだ。
何より冬の白銀の森は格別である。
雪が降り積もった森の中を、スノーシューを履いて歩くことほど楽しいことはないだろう。
植物のほとんどは、枯れ、木も葉を落として少し寂しい景観だが、何より動物の情報がいたるところに残っている。足跡や食べ残しなど、それを見つてけた時は、まるで宝探しゲームに夢中になっている少年のように心が躍る。
動物の足跡からは、たくさんの情報を得ることができる。
足跡の向き、歩幅、その先にある寝床の後、糞。。。
そのすべての情報から、動物の行く先、居場所を突き止めていき写真を撮っていく。
普段は、ふわふわと生きている自分だが、雪山に入って動物を探すときには、全神経を集中して情報を集め、視界を広く保ち、わずかな動物の動きも見逃さない。
動物を見つけてから、そのままシャッターポーズを保ってくれる、お人好しな動物は、まず存在しないだろう。
だからこそ、病気のキャッチフレーズではないが、早期発見が大切である。
この時期、森の中ではたくさんのウサギの足跡を目にすることができる。
その他にも、リスやシカ、キツネなどの足跡が多いが、何よりウサギを昼間に見つけ出すのは難しい。
主に夜間に活発になる彼らは、昼はほとんどお休み中である。
さらに、彼らは足跡を多く作って敵を撹乱させたり、ギリギリまで雪と同化してピクリとも動かずやり過ごしたりと、何ともやりにくい相手だ。
そんな彼らを見つけ出した時の達成感は、半端ない。
一瞬、見つけ出したことを自分で疑ってしまうほどだ。
何より、自分の予測が当たって発見できた時の喜びはたまらない。しかし、残念ながら、写真にはその苦労と努力を表現できないのである。
それに、吹き出しで「私は、こんなに努力しました」などと写真に付け加えることほどかっこ悪いことはないだろう。
だから、そんなアピールをしたくならないように、普段から謙虚で控えめな姿勢でいるよう心がけようとするが、それこそ、動物を探すことよりも難しいかもしれない。