先月は、最低気温が-30℃を超える日が続き、気温が下がるにつれ、友人や家族から心配のメッセージが届いた。
iPhoneの天気予報に「極寒」と表示される文字が、寒さへの不安をさらに煽るが、北海道の雪山で動物を追っかけていた頃を思えば、この寒さは大したことないだろうと余裕の笑みを浮かべていた。
そんな気温の中、アイスフィッシングへ行くと、その根拠のない自信は簡単に打ち砕かれてしまう。下ろし立ての-100℃対応のBaffinブーツや、一張羅のNorth Faceジャケットを着込んでも、とにかく寒い。
呼吸をすると肺の奥底からひんやりとして、まつ毛は吐息で瞬時に凍り付いていく。凍り付いたまつ毛の存在感は、付けまつげやマスカラを使うよりも、遥かに存在感を増し、顔がどんどん変わっていくのがとても面白い。近くの温泉で、濡れた髪を凍らせて作品をつくる「ヘアアートコンテスト」が開催されているのにも納得がいく。
釣り上げた魚も、数分で凍り付いてしまう厳しい気温の中、頭上をハクトウワシが気持ちよさそうに飛び回っていた。
北米の固有種でもあるハクトウワシは、羽を広げると体長が2mにも達し、飛んでいる姿は、圧倒的な存在感を見せつける。純白の頭部に黄色い鋭い嘴は、さらにエレガントに見せ、多くのカメラマンを魅了してきただろう。
アメリカの紋章にも多く取り入れられ、どこか猛禽類の王様のような雰囲気が漂っているが、ハクトウワシは、主に、魚や車に跳ねれられた鹿などの死骸を食べるscavengerである。
もちろん、狩りを全く行わないわけではないが、食事のほとんどを死骸に依存する彼らは、カラスとよく揉め、追い立てられてしまう。
見た目は、非常に強そうで、向かうところ敵なしのような風貌だが、集団で追い立てるカラスに、迷惑そうに逃げ回る姿は、見掛け倒しなイメージを植え付けられてしまうだろう。
しかし、重たい鮭をつかんで飛んでいくほどの腕力があるため、カラスも深追いはできず、時々、ハクトウワシからの反撃にあっている。不必要な争いを避け、むやみに他者を傷つけず、譲れな場面では、その力を存分に発揮する姿にはとても好感が持てる。
この日は、上空には風があるらしく、あまり羽ばたかずに、時折ふわりと浮き上がってみせていた。周りには、カラスの姿も見えず、気持ちよさそうに上空での時間を楽しんでいるようであった。